発熱の原理
高周波誘導加熱
導体に電流を流すと発熱します この発熱の現象をジュール熱と言います。
簡単な例で電池と電球を配線でつなぐと電球が発熱して光るのがこのジュール熱を応用した例と言えます。
高周波加熱の基本原理もこれと同じで導体に電流を流して加熱します。
電池と電球の例が成り立つのは配線の抵抗と電球の抵抗に大きな差があり 回路全体の電流値は電球の抵抗でほとんど決まってしまい配線の抵抗程度では発熱に至らないという事です。
これを厳密に考えると電球を発光させるための電流値を計算しその電流では加熱しない配線を選定する事で電池と電球の回路は成り立っています。この様に電球と配線のように大きな抵抗差があると簡単ですが 電球と配線の抵抗値に大差がない場合技術的に難しくなってきます。いかにして導電部分と被加熱部の抵抗差を作るかが問題です。
金属(例えば鉄とか)をジュール熱で加熱したい場合はその抵抗値に似合う電流を流せば
ジュール熱で加熱出来る筈です、ところがこれは電球のようには行きません あまりにも抵抗値が小さいからです。
そこで交流電源を使います。交流はコイルに流すと交流磁界が発生して磁界中に導体をいれると
誘導電流が発生しジュール熱も発生します。ちょうどトランスと同じ原理です。
電流値は一次側のコイル巻数と二次側の比で決まるので一次側に流す電流は巻数比で調整できるうえ、非接触なので構造的にもメリットが有ります。
(正確には一次と二次巻数比でインピーダンス(抵抗)が変化します)
交流電流の物理効果を利用する
交流電流を導体に流すと周波数が高いほど電流は表面に近い所を通ろうとする”表皮効果”という現象が有ります。つまり直流は導体の断面積全体を使うのに対し交流は表面に集中するという現象で周波数が高くなるほど流れる所が小さく(狭く)表面に集中してしまう現象です。
電流の通る場所が狭くなるので当然抵抗値も大きくなりその分電流は小さくて済みます。
また高周波焼入れはこの現象を利用して表面から一定の深さまで加熱する応用例です。
磁界により発生した電流はある方向に流れ始め、交流なので磁界の方向が切り替わると電流の向きが反転するわけですがヒステリシスにより電流の流れを妨げる抵抗が発生しますこれをヒステリシス損と言い交流特有な現象でトランスやモーターではこれを鉄損と呼び忌み嫌いますがIHでは大歓迎です。ちなみに交流電流の周波数と抵抗値の関係は周波数比のルート倍に比例します。
従って交流の方が直流より抵抗値が高くなる点も交流が有利な理由の一つです。
基本原理
加熱後の導体の断面
IHは磁界で通電する
配線で通電する
浸透深さを計算します。
浸透深さ(cm)=5.03*10^4*√(p/(u*f))
p:体積抵抗率(Ω・m)
u:比透磁率
(強磁性は1より大きく反磁性体は1)
f:周波数(Hz)
式を記憶させれば希望する浸透深さに対して周波数を逆算計算すると言った計算が簡単に出来ます。
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発熱の原理
発熱
発熱
磁界
磁界
抵抗小
抵抗大
電池
高周波加熱の利点と欠点
高周波加熱は安全でエコロジーと言われているようですが、現在発電所の主流が石炭や石油なのでその意味ではあまりエコロジーとは言えないようです。
安全面においても火気を使っての加熱に比べ火災のリスクは小さいですが管理を怠ると高電流ゆえの漏電火災を引き起こす危険性があります、火を使う場合は火気として安全対策が重視されますが電源の場合、危険性が分かりづらく安全対策が不完全に成りがちです。導入の前にはこの種の安全対策と安全に使用する為のルール作りが必要です。
使用面においては高周波加熱は装置立ち上げに時間が掛からず炉のようにアイドル時間の浪費が有りません。段取り替えや処理条件の変更調整でも基本的に電流値の調整で応答レスポンスが良く制御しやすいことが特徴です。
火気を使う加熱はとかく熟練度を必要としますが高周波加熱は時間や電流値等 数値化することができるので熟練度を必要としません。
昇温に関しては高周波加熱の場合、炉の様に均一に加熱するのは難しく部分的に加熱するのに向いています。この様に炉とは相反する特性ですがこれらをミックスしたハイブリット炉を作ったことが有ります、高周波加熱を使って前段加熱し後半に炉を使って均一加熱する構造です。
季節によって被加熱物の初期温度が異なる場合など後半の炉への投入温度を均一化する効果狙いです。この構造は炉の全長を短く出来る事も特徴です。